6.その他の立体視研究

6.1. 逆転視事態での視覚?運動協応反応と知覚反応
 逆さ眼鏡による逆転視事態で、約1週間程度にわたって順応させると、視覚―運動協応関係は、すみやかに学習されるが、視野の再逆転やその他の知覚反応については変化が起きないと言われている。Linden et al.(19)は、4人の被験者に6日から10日間にわたって上下左右逆転の眼鏡に順応させ、視覚?運動協応、視野の再逆転、陰影による凹凸知覚テスト、そして視覚領の機能的磁気共鳴撮影(fMRI)を行った。その結果、視覚?運動協応はすみやかに形成されたが、その他には変化が生じていない。

6.2. ウマの両眼立体視能力
 ウマは両眼が前額に対して平行についていないので、両眼立体視能力は有していないと考えられてきた。しかし、両眼融合視野は65度程度もっているため、両眼立体視能力の存在も推定される。これまで、ハヤブサ(Fox et al 1977)とハト(McFadden 1987)には両眼立体視能力が備わっていることが確認されているが,霊長類以外の哺乳類での両眼立体視能力についての行動学的検証はなされていない。そこで、Timney & Keil(29)は、ウマのランダム・ドット・ステレオグラム(RDS)による両眼立体視能力(global stereopsis)についてしらべた。2頭の被験体は、はじめに平らな面と凸状の突起物のあるパネルが提示され、平らな面のパネルを選択したら強化される。この弁別学習が完成したら、弁別テストに移行し、被験体の片眼に緑のフィルターを他眼に赤のフィルターを装着し、両眼立体視が成立すると凸状の突起物が出現するRDSの張り付けたパネルと両眼視融合の生起しないRDSの張り付けたパネルとの弁別テストを試行した。その結果、2頭のウマは有意に強化刺激を選択することを示し、両眼立体視能力(global stereopsis)を有していることが明らかにされている。

6.3. ニワトリとオクルージョン要因
 ニワトリがオクルージョン(対象の重なり)を奥行手がかりとして利用できるかについて実験が試みられた(Forkman(8))。刺激は、図17-(A)に示されたような平面画像で、タッチパネル式のディスプレー上に提示される。刺激は同大の小円と矩形のいずれかを奥行的布置に描かれた線上に配置し、遠方に位置された刺激を啄ついた時に報酬で強化する。テスト刺激(図17-(B))として、小円と矩形を重ねたパターンを提示したところ、重ねられた方の刺激対象を有意に啄つくことが見いだされた。このことから、ニワトリはオクルージョンを奥行の手がかりとして利用できると考えられる。