その他の3次元視研究

1.面の質的類似性と奥行分離
図と地の問題解決を行うとき、図を規定するものはエッジと面である。エッジがどの形状に属するかは、ゲシタルト要因の中の良い連続の要因によって規定される。一方、面がどの形状に属するかは、面上の質的類似性によって規定される。面の質的類似性とは、色、明るさ、テクスチャの類似性をさし、これらが類似しているものはひとつのまとまった形状として知覚される。たとえば、図30の(a)はエッジの連続性と面の質的類似性によって、(b)はエッジの連続性のみによって、(c)は面の質的類似性のみによって、それぞれ遮蔽するものと遮蔽されるものに分離して知覚されるが、(d)ではエッジの連続性、面の質的類似性の両方が存在しないために形状の知覚的統合は生じない。Yin et al(27)は、面の質的類似性が存在すれば、まとまりのある形状として知覚的に統合される傾向をしらべるために、刺激パターンをステレオグラムで提示し、両眼視差による奥行的分離と面の質的類似性による知覚的統合をコンフリクトさせる方法で、その傾向の強度を測定したところ、両眼視差の指示する奥行的分離に抵抗して面の質的類似性による形状の知覚的統合を維持する力が存在することが示されている。

2.図−地分離に対応する脳部位
fMRIを用いて、図−地分離を担う脳部位の同定が、Skiera et al(21)によって試みられた。使用した刺激図形は、図31に示されたようなパターンで、実験では図?地分離が生じない等質なパターンから図-地分離が生じるパターンに連続的に変化させ、その間の脳部位の反応がしらべられた。その結果、両側のV1領域が顕著に図-地分離対応して応答すること、またV2領域も若干の応答があることが明らかにされた。このことから、図-地 分離は、視覚情報処理の初期の段階で行われると考えられる。