3.運動要因による3次元視

3.1.3次元形状の復元に与えるパースペクティブ要因と加速度要因
 運動要因からの形状の復元問題では、どんな手がかりが形状の復元に関係しているか、またどのような特性を持つ形状が復元されるかが問われている。計算論の立場からの分析は、2つの正射影像からは、理論的に一意的な形状は復元できないとされる(Ullman 1979)。形状の復元に関係する手がかりは、形状に関係し正射影像に矛盾しない手がかりと考えられる。Hogervorst & Eagle(8)は、パースペクティブ要因と加速度要因とが、3次元形状の復元にどの程度関与するかを楔形図形でしらべた。図9は、楔形を平面に垂直においた図形(A,B)であり、C,Dは楔形を垂直軸に反転させたときのシミュレーションである。C、Dの図の中で、黒い単線は最初の位置から中間の位置までの回転を表し、白い単線は中間の位置から最後の位置までの回転を示す。形状復元のためのシミュレーションは、パースペクティブ投影と正射影投影条件で作成され、被験者には楔形の視えの角度についてのマッチングを、両眼立体視でこれとは別に提示した図形の角度を調整させる方法でおこなった。楔形は垂直軸に対して反転させるが、その際、楔形図形の大きさ、反転角度、回転の加速度、楔形の角度も操作された。その結果、パースペクティブ要因は比較的図形が小さいときに(視角8°)効果が高いこと、また加速度要因は形状復元の知覚を容易にすることが明らかにされている。

3.2.3次元シーン内の3次元物体の大きさ(奥行次元)知覚
 3次元シーンの異なる奥行距離に位置させた対象の視かけの大きさ(奥行次元)が、Sauer, et al.(16)によってしらべられた。3次元シーンはドットでシミュレートした床面と天井面か構成され、その間に測定対象として異なる奥行距離(2.3、34.9,79.2m)にあるポールに取り付けられた円筒形のシリンダーが配置された。操作した奥行要因は、運動視差とパースペクティブで、それぞれの要因は単独でシーンを構成した。対象の視かけの大きさ(奥行次元)は、観察者からみて垂直に置かれたシリンダーの直径の大きさをマッチング法で測定された。その結果、対象までの奥行距離が増大するにつれ対象の視かけの大きさは小さくなること、シリンダーに回転を与えることによって対象中心的記述情報を増大すると、運動視差条件では、回転速度が高いほど対象の視かけの大きさは増大することなどが明らかにされている。