6. まとめ
2007年の3次元視研究の成果をまとめると次のようになろう。
6.1 視差の特性
両眼間の眼球のねじれで生じる水平視差の立体視(Cycofusion)
 Mitsudo(19)は、両眼間の眼球のねじれで生じる水平視差の立体視が生起する可能性として、(1)エピポーラ線の方向が、両眼間に眼球のねじれが起きても、網膜に関して正確に固定されているために両眼間で視差対応がとられるため、(2)両眼間に眼球のねじれが起きないけれども、網膜上のエピポーラ線が回転してしまうために両眼間で視差対応がとられるため、(3)(2)(3)の中間説を挙げ、実験的に検証した結果、キクロ融合による立体視は、エピポーラ線の方向が両眼間に眼球のねじれが起きても網膜の子午線上に正確に固定されて両眼間で視差対応がとられることを示した。
時間的周波数にチューニングするステレオチャンネル
 Lee et al.(17)は、種々の時間的および空間的周波数パターン条件での視差とコントラスト感度との関係を測定した結果、(1)コントラスト感度は、視差の増大に伴って変化し、ある視差値をピークとして低下すること、(2) 視差の増大に伴うコントラスト感度の最大値は空間周波数に応じて変わること(低空間周波数ほど視差の最大値は高くなる)、(3)時間的変化要因の増大に伴うコントラスト感度は10Hz までは一定、これ以降は低下、またこの変化は低空間周波(0.23,0.94,3.75c/deg)ほど感度は高いことなどを明らかにし、空間周波数および時間周波数にチューニングする両眼視差チャンネルはそれぞれ6本あるいは7本あることを示唆した。
垂直視差の役割
 これまでの研究によれば、垂直視差は水平視差(位置視差)を補完し、対象の奥行絶対距離、対象の大きさ、傾きそして湾曲の知覚を規定している。垂直視差が水平視差と異なる点は、垂直視差が有効なためには対象が大きな視角をとる必要がある。ここに2通りの仮説が考えられる。その1は、垂直視差は当該の対象が視角22度以上でなければ有効に機能しないとするもの(局所説)、その2は当該の対象が視角22度以下でも、その周囲のものが視角22度以上ならば当該の対象の3次元特性の知覚に機能するとするもの(大局説)である。O’kane & Hibbard(22)は、大きな背景面内に置かれた小さな対象の形状と大きさ知覚に、その背景面の垂直視差を変化させたら影響が生じるかをみることで後者の仮説を実験的に検証した結果、垂直視差はターゲットとした対象の視角が小さい場合でも、垂直視差で規定された背景面が大きければ、当該対象の形状と大きさ知覚に影響をもつことを明らかにした。
両眼視差と「剛体性をもつ運動要因」間の相互関係
 Di Luca et al.(6)は、両眼視差と運動要因という2つの奥行手がかりから3次元形状を復元する場合に剛体性の拘束条件が働いていることを実験的に検証した結果から、両眼視差と運動要因とがともに線形の関係を保ちながら3次元形状の復元に際しては剛体性の拘束を受けることを示した。

6.2 両眼視差によらないステレオグラム立体視
両眼視差をもたないステレオグラムの立体視-stereoscopic sliver-
 Sachtler & Gillam(24)は、左右間で両眼視差を持たないが両眼立体視すると立体が出現する新奇なステレオグラムを報告した。この新奇なステレオグラム条件とこの白い紡錘形に両眼視差を付した通常のステレオグラム条件とで、両眼立体視過程以外の要因が入らないようにステレオグラムの提示時間を短く操作し、この紡錘の奥行傾斜の見かけの傾きの出現方向の正確度をしらべた結果、両ステレオグラム条件ともすべての提示時間でこの紡錘の奥行傾斜の見かけの傾きの出現方向の正確度が同等になることを確かめた。この新奇なステレオグラムによる立体視が通常の両眼視差を付したものと同等であることは、両者の情報処理過程が同一、あるいは一部を共有していることを示唆しよう。
「篩い立体効果(Sieve effect)
 「篩い立体効果(Sieve effect)」を示すステレオグラムには、左右のステレオグラムペアの間に両眼視差はなく、その代わりに左右パターンを構成する要素の明るさコントラストを逆転して作成されている。このステレオグラムでは視野闘争が出現するが、同時に明瞭な立体視も生起する。この「篩い立体効果」に影響する要因は、視野闘争が生起する領域の大きさ、明るさコントラストの程度、そして奥行反転を起こさせるパターンを構成する要素図形の大きさであるという。このことは、「篩い立体効果」は明瞭な視野闘争が起きるときにもっとも強く生起すると示唆する。Matsumiya,et al.(18)は、このことを実験的に検証した結果、要素図形の大きさ、その明るさコントラスト、要素図形の縁の太さを変化させたときの視えの相対的奥行がもっとも大きくなる条件と、視野闘争の反転頻度がもっとも高くなる条件が一致し、視えの相対的奥行と反転頻度との間には正の相関があることが示された。篩い立体効果」は視野闘争と強い関連があることが確認されている。
ダヴィンチ・ステレオグラムの解法
 ダヴィンチ・ステレオグラムの解法のための新たなニューラルモデルが、Asse & Qian(1)によって提唱された。このモデルでは、第1段階で第1視覚野(V1)における視差エネルギーモデルによって視差が計算され、第2段階で第2視覚野(V2)における「視差―境界―選択的ユニット(disparity-boundary-selective unit)」で視差が引き続いて計算される。第1段階では、眼優位性コラム構造にもとづき水平に何段にもわたって帯状にスライスされた左・右眼からの刺激パターンが左右交互に合成される。このとき、視差がなければ合成イメージには縦方向にズレが生じないが、視差があればズレが生起する。このズレすなわち垂直方向の輝度分布は、空間周波数で検出される。つまり、粗い(低)空間周波数チャンネル(受容野が大きい)から密な(高)空間周波数チャンネルへと次々と適用(「粗―密アルゴリズム(coarse-to fine algorism)」)し、それらのチャンネルで示されるもっとも高い応答特性を視差として特定する。第2段階では、V1で検出した視差はV2で加算され統合される。
実景のなかでの両眼間ハーフオクルージョンの立体視効果
 Wilcox & Lakra(30)は、これまでの両眼間ハーフオクルージョンに関する研究が手がかりを両眼視差に限定したステレオグラムでのみ実施され、パースペクティブ、テクスチャ勾配、陰影、重なりなどが除去されていることを指摘し、さまざまな奥行手がかりが存在している実景のなかで、両眼間ハーフオクルージョンが立体視、とくに相対的奥行の視かけの順序を決める際にどのような役割をもつかをしらべた。それぞれの条件で立体視が出現するまでの反応時間を測定したところ、ハーフオクルージョンが存在しかつ奥行出現方向が正しい条件でのみ、さらにはハーフオクルージョンの大きさがもっとも適切な場合にのみ有意に立体出現時間が短いことが示された。一方、ハーフオクルージョンを付す対象の面のテクスチャが乏しい場合(統制条件)には、このような差は示されなかった。これらのことから、ハーフオクルージョンはテクスチャ勾配、パースペクティブ、陰影、重なりなど有力な奥行手がかりが存在する場合に、手がかりとしての効力を持つと考えられる。

6.3 両眼立体視過程
両眼立体視過程と知覚の体制化との関係
 Treder & van der Helm(27)は、シンメトリーパターンと反復パターンの知覚体制化の違いについて奥行分離をステレオグラムで導入ししらべた結果から、パターンのシンメトリー性は刺激の回転に対して,反復性は大きさ変化に対してそれぞれ頑健であることを示し、パターン認知過程と3次元視過程とは視覚処理過程のなかで相互に関連していると考えた。
両眼立体視過程と視野闘争過程
 空間周波数チャンネルのうち、ある周波数は視野闘争を起こすが、同時に他の周波数は両眼立体視を可能にさせる。しかし、ある範囲内の空間周波数をマスキングとして追加すると、視野闘争が起きるが立体視は起きなくなる。Blake,et al. (1991)は、これを追試して、立体視が視野闘争と同時に生起するか否かはマスキング刺激のノイズコントラストによって決まることを示した。ノイズコントラストが低い場合には立体視のみが、それが中程度では立体視と視野闘争が、そしてそれが高い場合には、視野闘争のみが生起することがわかった。一方、ステレオグラムのそれぞれのペアに視野闘争をもたらす単眼刺激を重ねても立体視が起きるか否かについては未確定である。
 Buckthought & Wilson(4)は、両眼立体視過程において視野闘争がどのような役割を果たすのかを確かめた結果、両眼立体視の空間周波数が視野闘争のそれより大きいときには、両眼立体視過程と視野闘争過程が共存するが、しかしそれらが同一の空間周波数の場合には相互に干渉することを明らかにした。
視野闘争における排他的抑制をもたらす刺激特性
 Knapen et al.(16)は、視野闘争における排他的抑制が刺激特性の低次の神経生理的な空間における刺激間の距離特性によって規定されると考える刺激特性依存仮説を検証するために、視野闘争図形を用いて刺激の距離特性を変化したときの排他的抑制の頻度と持続時間を測定した結果、(1)パターン間で色相差と奥行差が大きくなると、すべての条件で排他的視野闘争が強くなること、(2)「フリッカー+スイッチ条件」と単眼視野闘争条件では排他的抑制の仕方の相関が高いこと、(3) 両眼視野闘争でのパターン連続提示条件とフリッカー条件では視野闘争の生起の仕方は相関が高いことなどを示した。視野闘争における排他的抑制は、刺激特性間の距離が増大すると大きくなること、両眼間闘争ではなく刺激間闘争が生起していること、さらに色相差と奥行差はそれぞれ独立に排他的抑制に関係していることから刺激特性依存説が支持された。

6.4 両眼立体視と輻輳作用
競合する視差によって駆動する輻輳作用(winner-take-all mechanism
 両眼に提示する刺激の明るさコントラストに2倍の差を設定して眼球運動を測定したところ、高いコントラスト側の眼球運動が反対側の眼球運動も完全に支配(winner-take-all)すること、言い換えれば低いコントラスト側の眼球運動は完全に抑制される。Sheliga et al. (25)は両眼間で視差の強度が異なる場合にも、同様な眼球運動が起きるかをしらべた結果、視差抗争がある条件でステレオグラムの片ペアのコントラスト比が平均2.2以上になると、垂直方向への眼球運動はコントラストの高い側が主導して生起し、コントラストが弱い方の眼球運動はまったく生じない(winner-take-all)ことを確認した。このことから、眼球運動の“winner-take-all”は視差処理過程にある他眼に対する抑制のしくみに基づき、結果として刺激強度の強い対象に両眼輻輳しやすくするしくみと考えられる。
キクロピアン錯視(cyclopean illusion)
 キクロピアン錯視の研究から、視対象の視方向が頭部中心を基点として絶対的方向で決められるのではなく、相対的方向でも決められている可能性について、Ono,et al.(21)は、視対象を残像にした条件、視対象をストロボ提示した条件、そして視対象の背景をランダムドットにした条件で実験的検証を試みた。その結果、(1)残像が網膜の中心に形成された場合には、残像は常にトラッキング刺激の移動に伴って右眼の視線にそって動いたが、残像が網膜の周辺に形成された場合には、残像は常にトラッキング刺激の移動に伴って横方向に移動すること、(2)視対象(510204080cmの観察距離に配置)をストロボ提示しながら、トラッキング刺激を追従させ(この場合、視対象は左眼には視えないように左眼を遮蔽する)、横方向への対象の移動があるかどうかを報告させたところ、すべての被験者はストロボ提示条件でもキクロピアン錯視が生起すること、(3)実験装置の背景にスクリーンも配置し、縦縞、横縞、ランダムドットおよび黒色の各パターンを提示し、トラッキング刺激を追従する条件、ならびに遠対象-近対象(トラッキング刺激のもっとも近い位置)を交互に注視する条件(この場合両対象は静止刺激)とでキクロピアン錯視が生起するかどうかを単眼視(片眼にアイパッチを装着)と両眼視で検証したところ、背景パターンが何であっても、またトラッキング刺激条件あるいは遠-近対象交互注視条件でも、両眼視であればキクロピアン錯視は生起することが、それぞれ示された。これらの結果から、視覚システムが視対象を両眼間の中央に想定されるキクロピアンの視線上に位置して視えることによって生起することを確認した。

6.5 両眼立体視と運動視との関係
斜視あるいは屈析異常による弱視児童の両眼立体視力と運動視との関連
 生得的な斜視あるいは両眼間の光学的屈析異常があると、視覚能力の発達が阻害されて弱視になりやすい。この場合、弱視眼のみではなく健常眼での運動視力の発達も悪い影響を受ける。Ho & Giaschi(13)は、高レベル運動処理過程(high-level motion processing)においても、屈析異常弱視と斜視弱視間に差があるかについてしらべた。運動視処理過程には、低レベル処理過程と高レベル処理過程とがある。前者は低空間周波数に同調する運動検出器の受容野で、後者は高空間周波数に同調して作用する刺激の特徴検出器の受容野で、それぞれ担われている。実験の結果、Dmaxを指標とするとき、弱視児童のそれは健常児童より大きいこと、しかし斜視と弱視条件には差がないこと、さらに両眼立体視力が悪いとDmaxは大きいことが示された。Dmaxと両眼立体視との関係は、高空間周波数条件でより強く生起し、運動視には両眼立体視過程の発達が密接に関係していると考えた。

6.6 運動視過程
運動視差速度の眼球運動速度による加算
 鋏状パターン間に運動速度差(帯状パターン前額平行面での横方向への運動)があった場合には、その間に奥行視が生じるが、頭部運動あるいはモニター運動が随伴しない場合には出現する奥行が反転したり運動が顕著に感じられたりして不安定であることが知られている。しかし網膜以外の手がかりが同時に存在する場合にはこの種の不安定が消える。一方、運動視差は対象の相対的な運動速度で規定されるので、出現する奥行方向は網膜上の相対的な速度差で決まるとする主張もある。Mitsudo & Ono(20)は網膜上の運動パターンの速度に眼球運動による速度を加えた条件で出現する奥行方向を測定することを試みた結果、眼球運動追跡速度が増大するに伴い手前に出現する帯の出現率がガウス曲線を描いて減じることが示された。運動視差による視えの奥行出現方向は,網膜パターンの運動速度と眼球運動追跡速度の加算速度で規定されている。
大きな視野で方向や速度を変化した場合の光学流動パターンの検出
 網膜上での光学流動パターン(オプティックフロー)は、観察者自身の運動および視環境の3次元構造を知覚する有力な手がかりである。光学流動パターンは、放射状パターン、平行パターン、および螺旋パターンに大別される。日常では、流動パターンはこれら3種類の流動パターンの複合として網膜上には投影される。Edwards & Ibbotson(7)は、大きな視野(82 deg 直径)内で、これらの流動パターンを作成し、流動パターン内のフローの方向と速度の検出の程度を測定した結果、大きな視野でも収縮する放射流動パターンに感受性が高いこと、しかし3種類の速度勾配条件では流動パターンの検出に差は生じないことを示した。

6.7 絵画的要因
テクスチャからの3次元形状の復元でのフェーズの効果
 人間の視覚システムでは、3次元形状を知覚する場合にアンプリチュードスペクトラムとフェーズスペクトラムのどちらの情報を用いているのかがThaler et al.(26)によってテクスチャによって立体が表現されたシリンダーの視えの立体の程度を測定することでしらべた。その結果、視えのシリンダーの深さは、表現した深さに応じてリニアに変化すること、またいずれの条件も視えの深さは過小評価されること、さらにその過小評価の程度はスクランブル条件で大きいこと、またフェーズスクランブリングの効果はテクスチャ要素が輪郭図形の場合最も高いことをが示された。これらの実験結果を踏まえて、テクスチャからの3次元形状復元のためのコンピュータモデルが提唱された。そのアルゴリズムは、はじめにテクスチャ要素の輪郭を検出し、次いでその要素の密度比を求めるというものである。このモデルに基づいて人間を被験者として実施したテクスチャパターンを用いた3次元形状復元のシミュレーション結果を人間から得られた実験結果と比較したところ、このモデルは人間を対象とした結果と良くマッチすることが示されている。
テクスチャからの3次元形状の復元のニューラルモデル
 視覚野のV1V2そしてV4の働きから2次元イメージを3次元形状に復元するためのニューラルモデルが、Grossberg et al.(10)によって提起された。まずイメージ内の2次元のテクスチャ要素からなるパターンを滑らかな3次元形状の面上のパターンに変換、次いで3次元形状の空間内に散在するテクスチャの各要素を統計的な特性値に基づいて知覚的3次元形状に復元する必要がある。このモデル(LIGHTness-and-SHApe-From-Texture, LIGHTSHAFT MODEL)では、外側膝状体、単純型細胞、複雑型細胞、空間選択細胞、方向選択細胞、双極型グルーピング細胞、フィーリングイン細胞、そして3次元面表現細胞の働きが想定されている。この“LIGHTSHAFT ”モデルは、3次元形状復元に関係する神経生理的処理過程を踏まえたコンピュータモデルであり、シミュレーション実験の結果、テクスチャからの3次元形状復元に限定した場合、その復元に成功した。
絵画的奥行の曖昧性
 2次元画像の奥行視量にはそれぞれの研究ごとに程度の違いがある。その原因としては、研究ごとに刺激パターンが違っているから、異なる測定方法を用いているから、そして被験者には反応の個人差があるからと考えられてきた。これらの原因は一部には意味があるものの、多くは妥当でないと思われる。そこで、2次元画像の立体視での曖昧性の原因をしらべるために、Battu,et al(3)は、自転車のサドルを後方から写真に撮った画像で視えの奥行量を測定し、その視えの奥行量の等高線マップを2次元画像に対応させて作成してみると、被験者間で大きく異なっていること、さらにCHでの測定値とCPでの測定値の相関をとってみると、ある被験者には相関係数が1に近いような対応がみられるが、別の被験者には対応がまったく見られないこと、しかし対応が見られない被験者の測定値をアフィン変換し、CPでの測定値との対応を見ると係数が1に近い相関を示すことを明らかにした。2次元画像での視えの奥行知覚は、被験者間の分析からユークリッド的特性をもつよりアフィン特性をもっている。
「凹面の顔(hollow-face)」の錯視
 「凹面の顔(hollow-face)」の錯視の説明には、「トップダウン仮説」、逆にこのような錯視が感覚情報とくにあいまいな両眼視差にもとづく誤った立体視に帰因するとする「ボトムアップ仮説」、およびこれら知識と感覚情報の両方に帰因すると考える説に大別される。そこで、どの仮説が妥当であるかが、Hill & Johnston(12)によって実験的に吟味された結果、「凹面の顔(hollow-face)」の錯視は熟知度、正立提示条件、陰影効果、および面の着色の要因によって促進されることが明らかとなった。
先天性白内障による乳児期の視覚経験の剥奪と視覚的認知能力の阻害
 生得的な白内障のために初期視覚経験が剥奪され、手術によって正常な視機能を回復した者を対象に主観的輪郭図形に対する認知反応をみることによって高次視覚機能への影響が、Putzar et al.(23)によってしらべられた結果、6月齢以後に白内障の手術を受けた条件群は、健常者群に比較して主観的輪郭の認知反応時間が長くなり、また誤認知が多くなることが確認された。生後6月齢以内に正常な視覚経験をもたないと、視覚認知能力が永久に損なわれる。