3次元視の発生と発達

両眼立体視の発達
 Kavšek(14)は両眼視差による立体視の発現時期を5~6月齢乳児で探った。乳児には水平交差、水平非交差視差(視差0.5°)および垂直視差(視差0.5°)をもつダイナミック・ランダム・ステレオグラム、または静止したランダム・ステレオグラムを提示した。これらのステレオグラムを両眼立体視すると四角形が出現して視える。
 実験の結果、乳児は交差視差ターゲットを非交差視差のそれより注視すること、また垂直視差より水平視差のターゲットを注視することが示された。これらのことから、5~6月齢乳児はすでに水平交差視差と非交差視差に反応できることを示している。

乳児における顔画像の正立パターンの偏好
  3月齢乳児は倒立した顔より正立した顔パターンを偏好する(Turati et al 2004 2005)。そこで、顔パターンの視覚情報処理の発達過程を検討するために、Dobkins & Harms(5)は、低もしくは高空間周波数フィルターを通して処理した正立あるいは倒立の顔パターンのいずれを偏好するかを、4月齢と8月齢乳児を対象にしらべた。実験に使われた刺激パターンは、46に示されている。これらは低空間周波数あるいは高空間周波数処理したパターンで、左側列は低空間周波数処理した顔パターンで上が乳児用、下が成人用、右側は高空間周波数処理した顔パターンで上が乳児用、下が成人用である。4月齢乳児の顔パターンでは0.4 cpdでカット、また8月齢乳児には0.5 cpdでカットした。成人用のパターンは0.5 cpd 1 cpdおよび 2 cpd3通りの空間周波数フィルターで処理された。刺激は正立顔パターンと倒立顔パターンを対にして提示し、乳児および成人の頭部の偏好選択をビデオに録画し分析した。刺激には顔とベビーカーの2種類とした(Dobkins & Harms 2014)4月齢乳児、8月齢乳児、そして成人群では、その視認度の閾値(コントラス感度)が異なるので、それに基づいて提示する刺激パターンのコントラストを各被験者の視認度の3.3倍にそれぞれ設定した。
 実験の結果、成人群では、正立パターン(顔とベビーカー)に対しては倒立パターンに対するよりその選択偏好度は低空間周波数と高空間周波数条件ともに高いこと、またとくに正立顔パターンの偏好度が高くなることが示された。一方、4月齢と8月齢の乳児群の正立パターン偏好度は、低空間周波数条件では顔パターンとベビーカーパターンの両方で差は生じなかったが、高空間周波数条件では顔パターンで有意に高かった。乳児における高・低空間周波数での正立顔パターンの偏好度は、空間周波数フィルターを通さない自然な条件と相違しなかった。このことから、乳児ははじめに高空間周波数成分に担われている顔の特徴に注意を向け、ついで低空間周波数成分に担われている顔の輪郭を追加して注視するようになると考えられる。