その他の3次元視研究

両眼視差およびパースペクティブを用いた誘導図形による奥行方向への新たな誘導運動   Leveille et al.(19)は、前額に平行に矩形を両眼視差とパースペクティブ要因の組み合わせ、あるいは両眼視差のみ、あるいはパースペクティブ要因のみで提示し、それを前額に平行にオシレートさせて図形内部の垂直方向に上下運動するドットがどのように視えるかをしらべた。刺激条件は、56のように、次の3通りを設定した。(1)前額平行に提示した矩形をパースペクティブ要因を用いて奥行方向に傾いて視えるように提示、それを左右にオシレートさせて誘導パターンを形成、誘導運動対象のドットは上下に運動させて提示する条件(図56A)、(2)両眼視差とパースペクティブ要因を用いて誘導パターンを提示し同様に左右にオシレートさせ、ドットも上下方向に運動させて提示する条件(図56B)、(3) 誘導パターンをパースペクティブ要因のみで単眼に提示し、ドットも垂直方向に運動させて提示する条件(図C)。実験では、これらのパターンをハプロスコープで提示し、被験者にはドットの視えの運動方向を別に提示したロッドを360°回転させて示すように求めた。
 実験の結果、誘導パターンの形状が両眼視差とパースペクティブ要因の組み合わせ、あるいは両眼視差のみで規定し、しかもそれらを前額に平行にオシレートした条件では、ターゲットであるドットはスラント面の奥行方向に沿うようにあるいは逆方向に沿うように誘導されることが示された。単眼にのみスラント面がパースペクティブで規定されオシレートする条件では、ドットはスラントの面に同化して動くように視えることが報告された。このことから、両眼視差に比較してパースペクティブ要因は奥行を規定するのに曖昧な手がかりであり、そのために誘導運動の方向が明瞭には規定されないと考えられる。