紫陽花

 梅雨の真ん中、わが家の紫陽花も満開になった。散歩で通るお宅でも両隣が垣根にともに紫陽花を植え、しかも道路際に鉢植えの紫陽花も並べ上下二段になって咲き誇り、その種類も、ガクアジサイあり、ホンアジサイあり、そして花の色も青味かかったものからから赤味まで壮観といえる。
 なんでも紫陽花は日本原産ということだ。ガクアジサイが原種でホンアジサイが派生したらしいがはっきりはしない。紫陽花の語源は、「藍色が集まったもの」を意味する「あづさい」がなまったものらしい。もっとも諸説あるようだ。
 鎖国時代にオランダから来日したシーボルトは日本の植物を集め、後に「日本植物誌」を著したが、そのなかで紫陽花の学名の中に自分の日本での思い人の名「お滝さん」を「オタクサ」として潜ませたという。これも紫陽花が日本原産の植物だったからであろう。
 花の色は開花当初は薄緑色だがしだいに青色あるいは赤色に変化する。土壌が酸性だと青色が強くなりアルカリだと赤色になる。このような花の色の変化は七変化とも八仙花と呼ばれる。

「紫陽花や藪を小庭の別座舗(べつざしき)」

 芭蕉の句。ただの藪が植えられただけの小庭でも紫陽花が咲き出せば、豪邸の別座敷にいるような気持ちになるものだ。これも紫陽花の瀟洒な花がもたらしてくれるからだ。こんな意味だろうか。

「紫陽花や昨日の誠今日の嘘」

 これは子規の句。紫陽花の花の七変化を句に取り込み、人の心模様が変わることを比喩的に詠んでいる。恋人の心だろうか、あるいは友の心か。

 「花入れや紫陽花さして涼をよび」(敬鬼)

 「片庭のあじさいの花七変化」 (敬鬼)


                                                 
                                                       2016年 6月25日