朝桜






 公園の桜が咲いた。今年は早くも桜の季節だ。桜の花が美しいのは朝の陽の光のなかで見る時だ。朝桜という。ほぼ水平な朝の陽をうけて、初めはぼんやりと、次に明るくなるにつれ色の鮮明さを増していき、花をつけた梢が揺れ、寒い朝は夜露をこぼしている。もっとも人によっては夕桜が美しいという。

「しんとして露をこぼすや朝桜」

子規の俳句。朝桜とは、夜露を受けて咲いている桜のことをいう。朝の静寂ななか、夜露をこぼす桜に感興をもよおしてる。

「朝桜みどり児に言ふさやうなら」

 中村草田男の俳句。幼い子が朝の光の中で夜露の落ちる桜を見ている。幼子はきっと美しいと感じているのだろう。そこで、挨拶が自然に出たものだろう。

「朝桜陽のなかゆくり艶うかぶ」 敬鬼        

                                              2020年3月25日