朝寒





 11月も末になると、朝の寒さがきつくなってきた。朝寒は季語にもなっているくらいで、この時期の季節感を良く表すものだ。身体が布団の中で温まっているので、なおさら朝の寒さを実感するのだろう。こうなると起床するのに暖房が欲しくなり、部屋が暖まるまで布団の中でうつらうつらすることも多い。

「朝寒に起きねばならぬ力あり」
 稲畑汀子の俳句。ほんとは温たいふとんのなかにとどまりたいのだが、それぞれやらねばない義務、たとえば子どもの朝飯の用意などがあるので、その起きねばならない義務の力に導かれて起きる。こんな心境の一句。  

「朝寒の起きてしまへば同じこと」
これも 稲畑汀子の俳句。朝が寒くてもあれこれ始めてしまえば寒さも苦にはならない。同じことと詠んでいる。実感できる句だ。

「朝寒の老を追ひぬく朝な朝な」
汀子の祖父の虚子の俳句。寒いと老いの身には一段とつらい。歩いていても若い者に追い抜かれてしまう。それが毎朝だ。こういった心境だろうか。虚子53歳の歳の俳句。

「朝寒や犬も朝日で温たまり」敬鬼

                        20161127