麦秋





 6月に入った。今は24節句では立夏の後の小満で、芒種と続く。小満とは、万物がしだいに成長して、一定の大きさに達して来る頃とある。麦畑が緑黄色に色付き始め、取り入れも間近いし、泰山木が大きな白い花を咲かせはじめるのもこの頃だ。芒というのは、稲や麦のような籾殻にある針状の毛をいう。芒種とは、このような植物の種を蒔く頃という意味のようだ。
「うれしけに犬の走るや麦の秋」
子規の俳句。明治時代には二毛作が盛んであった。梅雨まえのこの季節、空気は澄んでいるし、ほどよい気温に恵まれるので人間もそして犬も快適に感じる。
「さびしさはこころのさびや麦の秋」
上田五千石の俳句。黄色の穂波の麦畑を見ても楽しくなく、かえって寂しさがつのると詠んでいる。ゴッホも麦畑を描くが、心身の調子が上向いているときは明るい色調で麦畑とヒバリを描くが、死の間際にはそれらの色調が暗くなり黒いカラスが飛翔するように変わる。

「光満ちものみな育つ麦の秋」 敬鬼             

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