薔薇




 夕方の散歩でいつも通るお宅の垣根に沿った薔薇が赤い花を咲かせて今が真っ盛りだ。薔薇の花の色は、赤、深紅、ピンク、黄、橙、白橙、白があり、花の大きさも大輪から小輪まで、ほとんどが八重だが一重もあってその種類は多様だ。ただ青い色の薔薇はもともとなく、現在あるのは青いチューリップと同じように人工的に開発したものという。ばらは漢字では画数の多い薔薇と書くが、ばらはもともと日本語である。なんでもイバラから派生したという。薔の字はミズダテ(水蓼、穂状の花を付ける湿地に生える草)という一年草、薇はゼンマイをさす字であるという。
「薔薇剪つて手づから活けし書斎哉」
子規の俳句。花瓶に活けた赤い薔薇を書斎におくと、くすんでいた部屋がいっぺんに華やいだと詠んだ。薔薇の花には周囲を華麗にする力がある。とくに深紅の薔薇には。 
「ともに老いかの薔薇乙女寝息たつ」
 佐藤鬼房の句。共に年齢を重ねた穏やかに眠っている妻を見て、かっては薔薇のような生き生きとした乙女だったことを回想している。佐藤鬼房は1919年釜石市の生まれ、西東三鬼に師事、1993年に蛇笏賞を受けている。
「薔薇の花散華のごとく散り終えぬ」 敬鬼

                        
                     
2017610