蕗の薹









 蕗の薹が出る頃になった。実家の幾分じめじめしたところにこの季節になると芽吹いていたことを想い出す。
 フキノトウはキク科フキ属の多年草で、蕗の薹はつぼみの部分にあたる。硬い蕾が外側に開いて花が咲く。蕗の薹はフキの花芽をいい、花が咲いた後、地下茎から葉の部分であるフキが出てくる。
 蕗の薹は春を告げるもので、その形状も愛らしいので珍重されるようだ。葉の部分であるフキも料理されるが、さわやかな緑色の蕗の薹も天ぷらや味噌焼きなどにして食される。苦みがあるが早春の味を実感させる。

「うす雪を透いてみどりや蕗の薹」 
原石鼎の一句。島根県出身で高浜虚子に師事、大正期の「ホトトギス」を代表する俳人。蕗の薹は薄く雪がある固い地面から薄緑色の芽を出す。その緑色が早春を印象づけるが、それを詠んだ句。

「蕗の薹の舌を逃げゆくにがさかな」
虚子の俳句。フキには春の味が凝縮されているので、けっこう苦い。そのさわやかな苦みを俳句に詠んでいる。

「ここにふきのとうそこにふきのとう」
自由律俳句の山頭火の句。多分、田舎道あるいは山道を歩いていて見つけた蕗の薹を詠んだものだろう。まるで子どものようにここにもあそこにも蕗の薹が芽吹いている。それを無邪気に喜ぶ。眼にできるようだ。

「黒土割る緑さわやか蕗の薹」 敬鬼

                       2017219