花冷え







 この冬は暖冬で桜も10日くらい早く咲くと予測されていたが、実際に咲きはじめると冬に戻ったような日が数日続き、すっかり満開を遅らせてしまった。花冷えだ。よくある気候の変化で、春先には起きやすいし、暖かさが続いた後に低気圧が通過すると、西高東低の冬型の気圧配置になり北風が吹くためだ。桜はこの影響を受けやすい。いまは、いつもの季節のように満開、そして散り始めている。

「花冷えのともし灯ひとつともりけり」
日野草城の俳句。桜が満開で華やかなはずなのに、花冷えのうえ灯火がひとつ灯っているだけなので、一層冷え冷えと感じる。

「花冷やはるかに燃ゆる花篝」
これも草城の俳句。遠くでかがり火が焚かれ、ますます花冷えが強まるようだ。

「花冷や明日へ急がんこころもなく」
中村草田男の句。こんな花冷えをいまの時分じっくりと味わっていたいものだ。

「花冷えにしばし留めん桜花かな」 敬鬼

                                                                 2019年4月12日