はなみずき 

 桜の季節が終わるとはなみずきの咲く頃が近づく。アメリカ原産の樹木だそうだ。なんでも、1912年に東京市長であった尾崎行雄が、アメリカ合衆国ワシントンD.C.へ桜(ソメイヨシノ)を贈った返礼として贈られたのが始まりだという。 はなみずきの花は白あるいは薄いピンクで、最初は1cmほどの小さな薄い緑色の花がだんだんと成長し5cmほどになる。桜のように枝一面に花が付くのではなく、少し大きめの4枚の先に切り込みのある花びらが上向きに、ちょうど小さな帽子あるいは小さな盃のように枝の先端に沢山の花が付く。はなみずきにはアメリカヤマボウシの別名がある。最近では街路樹によくみかけるし、庭木としても植えられている。

 「高き風白く渡りぬ花水木」

高浜虚子の孫に当たる稲畑汀子の句だ。花水木は10m以上の高木となるので、その花々も見上げるところに咲いている。桜は花が枝の下向きにつくが花水木は上向きに付くので、顔を上向けて鑑賞する。そのとき、白い花のさらに上を風が吹き渡り、花びらが揺れた。五月のそよ風だ。こんな光景を写生したものといえよう。

 「一つづつ花の夜明けの花みづき」

加藤楸邨の句。石田波郷、中村草田男らとともに「人間探求派」と呼ばれた俳人、国文学者でもあった。夜が明けるとともに明るくなり、それとともに花みづきの白い花に光があたりひとつづつまるで映画のように咲いていくように見える。夜明けの神秘的な光景を巧みに切り取っている。

 「風に舞う妻の面影はなみずき」 敬鬼

小生の句である。風に舞い落ちるはなみずきを見ていると、あたかもそこに華やかだった若き日の妻がいるかのようなまぼろしを見る。

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