スーパーマーケットの魚売場に鰹を刺身やたたきにしたものが並ぶようになった。この地域では肴身の周囲を焦がしたたたきにして売っているのが多いようだ。かつて住んでいた浜松では、魚自体が新鮮なためにマグロと同じようにそのまま刺身にして売っていた。この時期にはそんな鰹の刺身を買ってビールを片手に食したことを想い出す。

「目に青葉山ホトトギス初カツオ」
江戸中期の俳人・山口素堂の詠んだ俳句。人口に膾炙され有名になった。 目に青葉、耳にほととぎすの鳴き、そして舌に初鰹と、3通りの感覚で味わう江戸の人々の好んだかつおが詠われている。

「初松魚べらぼうと申す言葉あり」
 正岡子規の句。子規は鰹を詠んだ句をたくさん作っている。松魚とはかつおのことである。この魚は傷みやすく、鰹節にして使うのが一般的だった。鰹節は硬く松のような年輪の筋が出たのでこのように呼ばれたという。句では、こんなに旨い刺身があるか、べらぼうめと江戸っ子のことばを取り込んで詠んだ。

「ひとりにも一献はあり初鰹」
森澄雄の句で、一人でビールで疲れを癒やし、かつかつおの刺身を味わう心境を詠んでいるとでも言えようか。

「初かつお大海を経て口にせり」 (敬鬼)                   

                            2017年5月20日