金木犀




 

 
 
 庭にある金木犀の花が満開となった。小さいオレンジ色の花がすべての枝に無数に付いている。これは甘い感じの強い方向を周囲に放つので、すぐにその存在に気がつく。夕方の散歩道のあちこちから、この甘酸っぱい匂いが風にのって鼻を刺激する。銀木犀は薄緑のかかった白い小花を同じ時期につけ、これも芳香は強い。金木犀を植えている庭は多いが、銀木犀は滅多にお目にかかれない。どちらもモクセイ科、モクセイ属に分類される常緑小高木である。

 金木犀が咲くと今年の秋も深まりつつあるのを感じ、もみじや銀杏の紅葉を待つばかりとなる。

「そこはかとなく木犀の香を人歩き」
 山口青邨の句。あちこちから漂ってくる木犀の香りを辿って人が歩いているようだといった意趣だろう。

「夜道よし木犀の香のとゞきゐて
こちらは山口誓子の句。木犀は夜になるといっそう香りが強く感じられる。どこで咲いている木から匂ってくるのだろうか。こんな風に歩く夜道もちょっと趣があって乙なもの。

 子規も、夜どこからか薫る木犀を
「雪洞は消えて木犀の匂ひ哉」と詠んだ。
 小生も思い出すのは、後学期がはじまると窓からだ漂ってくるキャンパスの金木犀の香りであった。

「金木犀香りに中でノートとり」 (敬鬼)

                                   2016年10月22日