クマゼミ










 
 暦では大暑でその名のごとく今年は酷暑。学校も夏休みに入ったので、登校時の賑やかなこどものおしゃべりがなくなった。その代わり、シャシャシャとクマゼミが賑やかにというより騒がしく鳴いている。

 数十年前にはこの地域にはクマゼミはほとんどいなかった。ここ十年ほどは、クマゼミとアブラゼミが多い。クマゼミ大型のセミで体長は60-から0mmほどもある。樹木の上の方はクマゼミ、下の方はアブラゼミと棲み分けているようだ。子ども達が捕虫網でつかまえられるのはアブラゼミばかり。鳴く時間帯も午前中はクマゼミ、午後から夕方はアブラゼミとこれも棲み分けているらしい。ヒグラシは、わりと木立に恵まれたところでカナカナカナと風情ある様に鳴くが、クマゼミはただ騒がしいだけで暑さを倍加させる。

「けふの日も事なかりけり蝉暑し
種田山頭火は、何も起こらない日常のなか、ただセミだけが元気に鳴いていて、感じるのは夏の暑さだけと詠む。共感できる。

「雲あそぶ青嶺の遠く蝉たえぬ」
遠くを見れば青い空のもと高い山並みに雲が戯れるように懸かったり通り過ぎたりし、耳にはセミが絶え間なく鳴いているのが聞こえる。飯田蛇笏の雄壮な句。

「顔近く蝉とび立てり母恋し」
セミをとって遊ぶのはこどもの頃、歳をとってもセミが飛び立つのを見ると母のことがついつい恋しく思い出されて切ないという。西東三鬼の俳句。 

「セミ追うやこどもの頃の懐かしく」 敬鬼                        

                                          2018年7月23日