栗の花



 

 
 栗の花が真っ盛りだ。花からの独特の匂いを周囲に放つので散歩していてすぐ気がつく。花は白く長く穂のように密集して樹上に花開いている。白い花は雄花で雌花はその付け根のあたりに小さく咲く。受粉した雌花から栗ができる。

 日本人は縄文時代から栗を食べていたようで、青森県の三内丸山遺跡から出土したクリの調査からそれが栽培されたものであることがわかったという。
 栗は栗ごはん、栗菓子など様々にいまでは使われている。私の出身地の近くの小布施町は栗菓子でよく知られている。ここには江戸から避暑にきた葛飾北斎の大天井画が残る。曹洞宗の寺である岩松院の本堂には21畳敷の天井絵があるが、これは葛飾北斎最晩年の大作「八方睨み大鳳凰図」で160年以上も前の制作(1848)、北斎は89歳のときのものという。栗を食いながら制作したなんて考えると楽しくなる。小布施をさらに北に進むと小林一茶の柏原がある。この辺り北信濃は江戸期文化盛んなところだったようだ。
 実は、この岩松院には戦国武将福島正則の墓がある。大坂落城後に、広島城の無断改修をとがめられ川中島合戦で有名な信州川中島に50万石から45千石に減封、失意の中に亡くなったという。

「くりのはな覚束なくもこぼれけり」
 子規は「栗の花」という句集を編み、数多くの句を詠んでいる。栗の花は夏の季語(仲夏)でる。この句はこぼれるようにしかも頼りなく咲いた栗の花の様子を描写したもの。

「栗の花つひて落ちけり蛇の皮」
これも子規の句で。落ちた栗の花がまるで蛇の皮のように地に横たわっていると詠んだもの。

「栗の花匂い放ちて鼻くすぐり」 敬鬼

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