胡瓜




 空梅雨かと思っていたら、7月に入り蒸し暑さが増し、雨がちな日々となった。でも、たっぷりと雨が土にしみこみ、胡瓜、茄子、トマトなど夏野菜は葉の緑を濃くしている。胡瓜は、花が咲くと同時に実を付け、数日で食べられる大きさに育つ。居間の出窓のすぐ外に坪庭の広さの菜園を作ってあるので、茂った葉の間に胡瓜がぶら下がって見え、涼やかだ。  

「むしあつく雨びびとふる胡瓜畑
飯田蛇笏の俳句。胡瓜のなるこの時期は梅雨なのでよく雨が降る。そんな蒸し暑く雨が降るなかで緑を濃くする胡瓜の畑を眺め、今年も暑い夏がもうすぐそこに来ている事を感じている。

「実篤の絵のへぼ胡瓜揉みたるか」
 上田五千石は白樺派の武者小路実篤の胡瓜の絵を眺めながら、一句を詠んでいる。素朴にごつごつと描かれた胡瓜をみて、酢で揉んでみようという感興を起こしている。

「漬物の胡瓜音よき土用かな」

 阿波野青畝の一句。胡瓜は生で味噌をつけても、ただ醤油をかけてもしゃきしゃきとして旨いし、ぬかみその一夜漬けにすると発酵の香りが出て大変旨い。とくに暑さが増す土用の頃は格別だ、と詠んでいる。

「葉のかげの胡瓜手に取る河童かな」 敬鬼

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