メタセコイア



 

 市民公園の野球場を取り囲むようにメタセコイアが植えられている。樹高は
20mもあるだろうか。いま、枝ごとに小さな新芽がいっせいに吹き出し、樹木全体に新緑がまことに鮮やかだ。和名はアケボノスギ(曙杉)あるいはイチイヒノキと呼ばれる。ヒノキ科(またはスギ科)メタセコイア属の落葉樹だそうだ。たしかに秋になると杉に似た葉を一斉に落とし、春になると一斉に芽吹く。

 日本では6500万年前の化石としてのみ発見され、絶滅した樹木植物とされたが、1945年に中国四川省で現存していることが確認され、1949年に挿し木と種子が移入され全国の公園や学校に植えられたという。私が勤務した大学の敷地にもその頃植えられ大木になっていたが、研究棟の新設に際して切り倒されたのは残念なことであった。後に、別のキャンパスに移動し、メタセコイアが何本か植えられていたのを見て感動したものだった。
 メタセコイア、曙杉、あるいはイチイヒノキのことばはいずれも季語になってはいないようだ。日本に定着して新しいからだろう。強いて季語を指定すれば春がふさわしい。なんといっても仲春の鮮やかな新芽が美しいからだ。

「メタセコイア空に届けと芽吹くかな」  敬鬼

                       2018415