麦茶



 

 梅雨開け十日の言われのごとくに、毎日33度あるいはそれ以上の酷暑が続く。筆者も高齢なので、熱中症にはおこたりなく麦茶を飲む。
 この麦茶というのは小さい頃からの飲料で母親が麦を炒って入れてくれたものである。冷やされた香ばしい麦の味のする麦茶は、喉をカラカラにして学校から下校した子どもたちには、喉をうるおしてくれる一番のものだった。サイダー水も良かったけれども、麦茶ごくごくと一杯飲めるのでよかった。今から思うと少し甘かったので砂糖が入れてあったのだろう。疲れた身体にもエネルギーを補強したのだ。たいてい、麦茶を飲んでからまた、陽が高いので遊びに出かけた。

麦茶あるいは麦湯の俳句は、いずれも喉ごしの冷たさを快感し、共感して詠まれている。子どものビールと言えるのだろう。 

「ひやくひろを通る音ある麦湯かな」  高浜虚子

「冷えとほる麦茶の碗を掌に愉し」   日野草城

「母も子も暑さに負けず麦湯呑む 」  長谷川かな女

「下校し麦茶一杯懐かしく」  敬鬼

21年7月31日