リンゴ、桃と並んで梨が店頭で売られている。秋の果物の代表だ。日本では千葉県、茨城県、鳥取県が三大産地とのことだ。千葉と茨城では幸水、鳥取では二十世紀を多く栽培する。幸水は赤梨系、二十世紀は青梨系といわれるが、果皮がそんな色をしている。
 梨は、古くから食用されていて、弥生時代の静岡の登呂遺跡からも種子が多数出土したという。原産地は中国。 

「梨の肉にしみこむ月を噛みにけり」                松根東洋城(18781964)の作句。漱石の松山時代の教え子。漱石に紹介されて正岡子規の知遇を受けるようになり、子規らが創刊した『ホトトギス』に加わった。この俳句は梨の果肉の甘さは、リンゴなどと違って太陽にではなく月に育てられた味がすると詠んでいるが、実際は太陽の光を一杯浴びて甘くなる。梨の淡泊な甘さを月の味と呼んだのだ。

「梨を剥く一日すずしく生きむため」                俳誌「槇」の同人、小倉涌史の俳句。59歳でガンのために死去した。梨を食して残暑の一日を心地よく過ごしたいと詠んでいる。

「頬張ればほのかな甘み梨果肉」 (敬鬼)

                               2016910