菜種梅雨 








 書斎から見える公園の桜も早くも葉桜へと移ろぐ。今年も満開のときに雨が4日間も続いた。菜種梅雨だそうだ。その合間、桜の木々が多い川岸を散歩した。例年通り見事に咲き誇っていた。同じことを考える隣人も多いと見えて、夕方にカメラをもって満開の桜をあちこちから映していた。川岸の両土手に桜が植えられているので橋から眺めると桜が川幅を狭めるように咲いていて壮観だし、水面に散る桜も流れていて風情もある。

「硝子戸も障子も閉ざし菜種梅雨」
 田中冬二の俳句。冬二は銀行に勤めの詩人で、俳句も詠んだ。信州など山国の春は雨に降られると、桜が咲いていても肌寒い。暗くなるのは承知でガラス戸を閉め、内扉である障子も閉める。そんな情景を詠んでいる。長野支店長や上諏訪支店長を務めたという。明治27年に生まれ昭和55年まで生きた。

「菜種梅雨いちにちさむくけぶるなり」
三重県津出身の 長谷川素逝の俳句。高浜虚子に師事した。花寒の頃のシトシト降る雨を素直に詠んでいる。

「菜種梅雨土にしみ入り草芽吹く」 敬鬼

                         2017412