ニイニイ、カナカナ、
ツクツクホウシ





  

 

 
 
 散歩に行く市民公園の雑木林で、夕方にカナカナ蝉が鳴きだした。澄んだ音色でカナカナカナと鳴く。その金属音に近い鳴き声が林の中に響いて爽やかだ。鳴き声の主を探すが、見つけたことはない。梢のかなり上の方に止まっているようだ。アブラゼミなどは木の下の方にいるので、休んでいる蝉は上手に近づけば素手でも捕まえることができる。でもカナカナ蝉は捕まえるのは難しいようだ。

 今日から立秋だ。カナカナ蝉に混じって法師蝉も加わってツクツクボーシツクツクボーーシと鳴きだした。夏至と冬至の中間が立秋だ。これからは日も短くなり、暑さも和らいでいくことだろう。

 「閑かさや岩にしみいる蝉の声」
これは芭蕉の俳句で最もよく知られているものだ。それではここで鳴いている蝉は何ゼミだろうか。歌人で有名な斎藤茂吉はアブラゼミと主張したが、芭蕉が訪れた時期などから、いまではニイニイ蝉が妥当とされている。というのも芭蕉が山寺を訪れた時期は太陽暦で7月上旬なのでアブラ蝉はまだ出現していない。ニイニイ蝉は「チチチーーー、チチチーーー」と鳴く。でも最近はあまり耳にすることがなくなった。

「いでや我よき布着たり蝉衣」

「梢よりあだに落ちけり蝉の殻」

「撞鐘もひびくやうなり蝉の声」
 これらも芭蕉の俳句。蝉衣、蝉の殻、蝉の声と蝉の姿、脱皮した蝉の抜け殻をとりあげて、幾分、ユーモアをこめて詠っている。

「アブラ蝉わが子にかけしゆばりかな」(敬鬼)

「おそろしき暑さの夏やせみしぐれ」(敬鬼)

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