お菜洗い








 信州の家庭では、私が育った60年前はお葉漬けをどの家庭でも樽にいっぱい漬けこむのが普通だった。お葉漬けというのは野沢菜漬けことである。というのは、手が凍るような冷たさの外の水道でお菜洗いを母親に頼まれて行っていたからだ。でも漬けて1月もする正月には、パリパリとして美味しい漬け物を味わうことができた。
 野沢菜は、もともと、長野の野沢温泉村を中心として信越地方で栽培されてきた大戦後は全国的に栽培されるようになった。冬、スキーに行き、冷えた身体をお汁粉と野沢菜を食すると忘れられない味となったことを懐かしく思い出す。 

「お菜洗手の冷たさに冬立ちぬ」 

「寒風にしゃきとさせるお菜洗い」 敬鬼


                                                                        12月20日