桜 餅



 2月も月末、寒い日もあるものの春めいた日が多くなってきた。遠い過去のことになる雛祭りがもうすぐだ。長子が女の子だったので、爺じが送ってくれた雛壇を飾ったものだが、子どもが小学校高学年になるにつけ、いつしか飾らなくなり、雛もお蔵入りとなった。この歳になると当時をなつかしく思い出す。祖父や祖母そして長女の友達を呼んで賑やかに祭りを祝い、無事な成長を願った。
 雛祭りに定番の起こしものといわれる餅菓子や桜餅、うぐいす餅が用意された。起こしものという菓子は練った米粉を木製の型番に押しつけ、鯛、扇などの形に打ち抜き、食紅を塗り描いたもので、愛知県が発祥地であるようだ。

「さくら餅うち重りてふくよかに」

「餅肌を恋ふ葉はがしぬ桜餅」  

2句とも日野草城の俳句。前句は桜餅のもち肌が女性のそれのようにふくよかと詠み、後句は餅を包んでいる桜の葉を剥がしてもち肌をめでたいと詠む。でも、桜餅は塩漬けにした桜の葉がお持ちの甘さをしき立てているのが良いのだ。

「桜餅草餅春も半かな」

子規も「草餅」の句集の中で桜餅や草餅を前にして春たけなわの季節がやって来ていると告げるように詠んでいる。

「桜餅茶たて愛でる老夫婦」 敬鬼

                               

                                               2019年2月25日