秋刀魚 2









 

 秋の代表的味覚の秋刀魚が獲れないと聞く。漁獲高が少なく、獲れても細いものしかなく、一頃のような形の良いものは市場には出ない。
識者によれば、3つの原因があるそうだ。資源量、回遊ルート、外国船の漁獲問題の3点だ。資源量は日本あるいはその他の国の取り過ぎに、回遊ルートは海水温の温暖化に、そして外国船の乱獲にあるという。
 実際、今年の初物は1匹500円もしていたし、中秋になっても2匹で600円という値段がつき、しかも身は細く、大刀ではなく小刀といったところだった。それでも、焼くと油が垂れ、香ばしい匂いが立ち、大根おろしで食すると、秋を味わえものだった。

「人を刺す太刀の光りの秋刀魚かな」
鈴木真砂女の俳句。真砂女は昭和の俳人で小料理屋を開店、「女将俳人」として知られている。秋刀魚の形は日本刀を思わせ、きらきらと輝く鱗をもっていることを詠んでいる。

「松籟や秋刀魚の秋も了りけり」  
石田波郷は大正期から昭和期に活躍した俳人で、人間性に深く根ざした、その作風人から間探求派と呼ばれた。松に吹く風が立てる音を聞くと秋刀魚の秋も終わりだと詠じている。

「大海を遊泳すがた秋刀魚焼く」 敬鬼

                                       
                                                         20201018