清明 

 

 
 
 葉桜から若葉へと季節は変わっていく。いつのまにか茂った若葉が緑陰をつくり、木陰に入ると気持ちの良い風が肌に浸みる。4月から5月へにかけては、週毎にその風景が変わる。桜から花みずき、そして藤の花へと花も変われば、若葉も桜から柳、そして欅へと移っていく。まことに二十四節句にある清明にふさわしく、万物がすがすがしく明るく見える。この候からしばらくすると穀雨、そして立夏へと続き、樹木は葉の色を濃くし、太陽の恵みを受けるべく繁茂する。 

 「清明の水菜歯ごたへよかりけり」  

鈴木真砂女の作句。昭和期を通して活躍し、96歳まで生きた。銀座に小料理屋を開業していたので女将俳人とも呼ばれた。清明の頃の4月上旬の水菜はしゃきしゃきとして歯ごたえが良く、お吸い物でも味噌汁に入れてもおいしい。それを素直に詠んでいる。「死にし人、別れし人や遠花火」、「男憎しされども恋し柳散る」といった句も詠んでいる。

 「椅子を移す若葉の陰に空を見る」

正岡子規の句。死病をかかえてどこにも出かけられない状況のもと、庭の木陰に椅子を持ち出して空を見上げたときの句であろう。緑の若葉の隙間を通して見える五月晴れの空の碧さに感動している様子が伺い知れる。

 「みどり子の手足まるまる若葉かな」 敬鬼

公園で憩う赤ちゃんをみると、その手足はまるまるとして健康そう。それが若葉からなる緑陰のもとでいっそう若き命が輝いているようだ。こんな情景を詠んだ小生の俳句。

                              2016417