師走





 12月に入った。今年の最後の月、師走。この時期になると、「もう師走なのか」といつも時の過ぎ去るのが早いことを実感する。とくに、平均寿命までを意識するからなのか70歳の坂を越えるとこのような感慨が強くなるらしい。
 師走の語源は寺の師が檀家を走り回るからと言われているが、これは俗説であり、本当のところは不明である。ひとつの説として歳極(トシハツ)からシハツになったのではないかとも言われている。

 正岡子規は、
「いそがしく時計の動く師走哉」
と気ぜわしい歳末の時期を詠んだ。稲畑汀子もこの時期の商店街の売出しなどで賑わう喧噪を
「抜け道もその抜け道も街師走
と詠んだ。

 高浜虚子は、
「能を見て故人に逢ひし師走かな
と能楽鑑賞後の感慨を詠んだ。亡き人を偲ばせるのが師走なのだろう。この時期には、年欠礼の葉書が寄せられるが、そこによく知った、あるいは世話になった先輩や知人の訃報があると落胆させられる。

「日めくりの薄さしみじみ師走かな」 敬鬼

                       2016124