泰山木 2



 
 家の玄関の前庭に植えた泰山木が今年も多くの花をつけた。以前は花が咲いても5、6個だったが、10数個も大きな白い、しかも香しい花を咲かせてくれたので嬉しくなる。この泰山木を二階の北側の窓から見渡せるので、朝起きると今日はいくつ咲いたかと覗きに行く。

泰山木とはモクレン科の常緑高木で、アメリカの中南部が原産で日本には明治初期に入ってきたらしい。英名はMagnoliaという。この大きな白い花から花言葉は「前途洋々」「壮麗」「威厳」だそうだ。泰山(標高1,545m)とは中国山東省にある山で封禅の儀式が行われるところとして知られている。封禅は帝王が天と地に王の即位を知らせ、天下が太平であることを感謝する儀式ということだ。始皇帝をはじめ前漢の武帝や北宋の真宗など十数人が、この儀式を行ったと伝えられている。現在は道教の聖地で多くの寺院が建ち並び、ユネスコの世界遺産(複合遺産)に登録されている。

この花は大きく白く咲き、香しく匂うが、しかし数日もすると大きな花びらが茶色に変色して落下してしまう。まさに華やかな花の凋落をみるようだ。

日野草城の俳句。

「さし寄りて泰山木の花逞し」

「昼寝ざめ泰山木の花の香に」

「ばらりずんと泰山木の花崩る」

 草城は、豪奢な花の装い、香り、その落下の様を詠んでいて共感できる。

 「皇帝に擬せられたのか泰山木」 敬鬼


                                              21年6月16日