七夕

 

 77日は七夕。いまでは幼稚園とか小学校でも低学年しか祝わないが、私たちの子どもの頃は家庭でも笹の葉を切り出し飾り付けたものだ。金や銀の短冊には自分たちの願い事や欲しいものを毛筆で書いたり、色とりどりの色紙を細工したりして飾り付けた。家業が洋品の小売りだったので、お店には結構豪華な笹の葉飾りが立てられ、商売繁盛を祈った。
 もともと七夕祭りは、繊維業と深い関係にある。というのも、「棚機(たなばた)」とは古い日本の神事で、乙女が着物を織って棚にそなえ神さまを迎えて秋の豊作を祈るものだったという。
 ちょうどこの頃、天の川を挟んで琴座のベガと鷲座のアルタイルが一段と輝きを増すので、日本ではベガを織姫星、アルタイルを彦星と呼び、一年に一度の逢瀬がこの日に交わされるという物語が作られた。これももともとは、牽牛と織女に関わる中国から伝来した故事に由来する。
 日本での三大七夕祭りは仙台、平塚、一宮である。いずれも織物業や繊維関連の商売が盛んなところだ。中心街の両脇には大きな笹飾りが立てられ、ミス七夕やミス織物らのパレードで祭りを盛り上げている。

 「七夕の逢はぬ心や雨中天 」
芭蕉の俳句。彦星と織姫星は一年に一度しか逢瀬を楽しめない。その貴重な逢瀬が雨で妨げられた。ああ無情といったところ。

 「うれしさや七夕竹の中を行く」

子規の俳句。金や銀の短冊、色とりどりの笹の葉飾りが立てられた小さな商店街を見物する楽しさを素直に詠んだ句といえよう。

 「七夕や浴衣に下駄の女の子」(敬鬼)

 「笹飾り今年も終わりか流れゆく」(敬鬼)

                         
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