夜寒




 

 この秋は天候が不順だ。10月に入ったのに秋晴れの晴天はほとんど無い。気象庁のデータでは、前3週間の日照時間は平年に比較して6割程度だという。この一週間でもほとんどが曇天で、お日様が照ったのは一日程度、洗濯も雨の合間に干すという有様だ。最も困ったのは小学校の運動会で直前まで予定通りに実施するか、延期するか迷ったそうだ。結果は予定通り、曇天の中で行うことを得てやれやれ。
 こんな天候なの蒸すものの残暑もない。それどころか夜は冷え冷えとし、明け方は布団を被るくらいに気温が下がる。夜寒の候だ。

「次の間の灯で飯を喰ふ夜寒かな」
小林一茶の俳句。灯りは次の間にしかともっていなく、そこに移って遅い夕食をとる羽目になった。飯を食ってしばらくすると身が冷えてきたことに気がつきわびしさがいっそうつのったといったところだろうか。

「夜寒さの買物に行く近所かな」

内田百鬼園の俳句。内田百軒の別号。百軒は漱石門下の小説家だが、随筆も書き、俳句もよく詠んだ。たばこでも買いに出たのだろうか、家の外に出た途端に冷たい風にぶるっときたことをそのまま句にしている。

「あはれ子の夜寒の床の引けば寄る」   

中村汀女の俳句。子に添え寝していたら掛け布団が引っ張られた。子に寄り添って温めあう状況での句。

「ふと目覚め身体の冷えや夜寒かな」 敬鬼

                              2016102