昨日の夕立のため、今朝の空気はひんやりとし、秋の気配が感じられる。そういえば、すでにアキアカネが飛んでいるし、ツクツクホウシも鳴きだした。暑い暑いと昼寝ばかりしていたが、その間に季節は移ろうとしているのだ。こんなことを感じながら、朝のゆったりとしたひとときをまどろみながら楽しんでいると、男あるじが出てきて、眼をこすりながら、「なでしこジャパンはたいしたものだな。ロンドンオリンピックでついに決勝進出を決めたぞ」と大声で話し出した。
  いま、オリンピックが開催されていたのだな。わが輩イヌ族には関係ないことなので、とんと関心がなかったが、どうやら日本勢は善戦しているらしい。そういえば、夜のテレビでは、水泳、体操、サッカー、バレーボール、陸上などが中継されて騒がしいな。わが輩は、ディスプレーとかに映された映像にはまったく興味がない。あの映像からは何も匂っては来ないからだ。人らしきものが、ちょこまかちょこまか動いているだけで、何をしているのか見当もつかない。でも、この家の男、女、そして娘あるじまでも、その映像の動きに一喜一憂しているので、何かしらの意味があり、興奮させられたり、落胆させられたりしている。男あるじは、自分ではできないスポーツを見るのが大好きなようだ。
「その通り、オリンピックでは、走る、投げる、跳ぶなど人間に備わっている運動能力を競う。スポーツは人間の身体的および知的能力の究極の姿を求めるものだ。人はどのくらい速く走れるか、泳げるか、高く跳べるかを競っている。体操もしかりだ。これらはどれも個人の能力を競う。これに、チームを組んで優劣を競うスポーツが加わった。サッカー、バレーボール、ホッケーなどがこれに当たるし、陸上や水泳でもリレー方式の競技では、チームで勝ち負けを争う」と解説しだした。
  わが輩は、スポーツに個人競技とチーム競技とがあることを知った。わが輩たちイヌの祖先であるオオカミは、個体ごとの力は弱いので、仲間をつくって生き延びようとする。人間も個人の力は弱いので、集団で外敵に対処してきたのだろう。
 「その通り。ひとりひとりの力は弱くても、それらを合わせると大きな力が引き出せる。いま、ひとりひとりは1の力をもつとしよう。10人いれば、単純加算では力は10となる。しかし、優れたリーダーに導かれれば、一人が1.2の力を発揮するようになり、10人合わせると12の力となる」と男あるじは説明した。
  わが輩は、力をあわせるとはそういうことなのかと合点がいった。寄せ集めの集団では独り一人のもつ力を十全に発揮できなくなり、チーム力が下がってしまう。でも、良きリーダーが各人のもてる力を統合できれば、各人の加算的総和を超えた力となるのだろう。なでしこジャパンの活躍は、個々人のもつ力以上のものが発揮されているためと思われる。でも個人個人の力が優れていて、チームの団結力も優れていたら、そのチームにはかなわないのだろうな。

「赤とんぼ 秋のさきがけ 遊び舞う」敬鬼

徒然随想

-なでしこジャパン